シェフの手から生まれる手打ちパスタ
ristorante ioが大切にしているのは、シェフの繊細な手仕事から生まれる手打ちパスタやラビオリだ。日本の旬の食材を取り入れながら、素材の組み合わせや香り、温度まで細かく配慮して一皿ごとに仕立てている。麺の食感、ソースの香り立ち、そうした細部の積み重ねが、モダンイタリアンとしての奥行きを形づくっていく。
季節ごとに食材は表情を変える。同じパスタでも時期が違えば違う味わいになるという前提で、コースは組み立てられている。前菜からパスタ、メイン、ドルチェへと続く一連の流れを、最後の一口まで飽きさせずに運ぶ構成力が、この店の核になっている。
白金にひそむ、肩肘を張らない一軒
東京都港区白金の落ち着いた街並みのなかに、ristorante ioは店を構えている。白金と聞くと構えてしまいそうになるが、この店が掲げているのは「自然体で過ごせる空間づくり」だ。少し特別な食事をしたい、けれど緊張はしたくない——そんな相反する気持ちに寄り添おうとする姿勢が、店の設計や案内文の端々からうかがえる。
温かみのある照明とウッド素材を基調とした内装が、その空気をつくっている。記念日やデート、女子会といった場面はもちろん、ひとりで静かに料理と向き合いたい日にも合う。個人的には、こうした「ひとりの客も自然に迎える」という構えが、店の懐の深さを感じさせて印象に残った。
料理に響き合うワインとノンアル、二通りのペアリング
コースの流れに合わせて、シェフ自らワインを選定している。前菜からパスタ、メインへと皿が進むごとに、料理の香りや旨み、余韻を引き立てる一杯が添えられる。ペアリングという形をとることで、料理とワインが響き合い、食事の時間そのものに奥行きが加わっていく。
ノンアルコールのペアリングも同じ思想で構成されている。季節の素材の香りや料理の温度感まで意識してドリンクを組み立てているため、お酒を飲まない人にとっても「もう一つのペアリングコース」として成立する。飲める人も飲めない人も、同じ食体験を共有できるようになっている。港区でこうした細やかな設計に出会えるのは、なかなか得がたい。


