無農薬野菜と旬の高級食材が並ぶ月替わりの会席
錦糸町 遊庵では、自家菜園や契約農家から届く無農薬・有機野菜を料理の軸に据えている。雲丹、鮑、蟹、いくら、キャビア、のど黒、松茸、トリュフ、ブランド牛といった食材も季節ごとに仕入れ、走り・盛り・名残という三つの時期を意識しながら一品ずつ仕込みが進む。毎月替わる会席の構成は香りや器の選定まで踏み込んでおり、同じ月に複数回訪れる客にはメニューを少し変えて出すこともある。押上エリアにほど近い住宅街の一角で、視覚と味覚の両面から季節を届ける和食に仕上がっている。
個人的には、盛り付けに添えられた季節の草花や器の取り合わせが印象的だった。料理が運ばれるたびにテーブルの景色が変わるような感覚は、写真では伝わりにくい部分だろう。柔らかな照明のもとで一皿ずつ向き合う時間は、食事というより体験に近い。来店ごとに「前回とまったく違う」と感じるリピーターも少なくないという。
蔵元との親交から生まれたプライベートボトルと40種超の酒
店主自身が蔵元と交流を重ねるなかで実現した専用のプライベートボトルは、ほかの店舗では手に入らない一本。十四代、飛露喜、而今などプレミアム銘柄を含め、常時40種類以上の日本酒がカウンター奥の冷蔵庫に並ぶ。白州、山崎、響、余市、宮城峡といったジャパニーズウイスキー、魔王、村尾、森伊蔵、佐藤黒、百年の孤独など本格焼酎の品揃えも厚い。宮城県限定の地酒まで網羅しており、酒だけを目的に足を運ぶ常連もいる。
フリーフロー付きのコースが用意されているため、複数の銘柄を少しずつ試しながら料理とのペアリングを探る飲み方ができる。「次はどの酒を合わせようか」と店主に相談すると、その日の会席の味付けに応じた一杯を提案してくれるという声が目立つ。宮城の限定酒や入荷量の少ないプレミアム銘柄は早い段階で品切れになることもあり、訪問のたびにラインナップが入れ替わっている。
宮城の実家で育てたひとめぼれを土鍋で炊く名物ご飯
会席の締めに登場する土鍋炊き込みご飯は、店主の実家がある宮城県の水田で無農薬栽培されたひとめぼれを使用している。粒立ちがしっかりしていて甘みが濃く、土鍋特有の火加減で仕上げたおこげの香ばしさが食欲をもう一段引き上げる。混ぜ込む具材は月ごとに替わり、旬の魚介や山菜が組み合わされる。水加減と蒸らし時間を日々微調整しながら、一膳ごとの炊き上がりに差が出ないよう管理されている。
「ご飯だけでもう一度食べに来たい」という感想を残す来店客が多いと聞く。実際、コース終盤でお腹がいっぱいのはずなのに土鍋の蓋が開いた瞬間の湯気と香りに負けておかわりする——そんな光景が夜ごと繰り返されているそうだ。炊き込みご飯を看板に据える和食店は珍しくないが、米そのものの産地と栽培まで店主の家族が担っている例はそう多くない。
全席禁煙・錦糸町と押上の中間に構える静かな和食空間
JR錦糸町駅北口と東京メトロ押上駅、それぞれから徒歩約10分。駅前の人混みを抜けた先の閑静な住宅街に錦糸町 遊庵はある。全席完全禁煙の店内には、店主の手仕事を間近に見られるカウンター席と、会食や記念日に適したテーブル席が配置されている。木を基調にした内装と控えめな照明が相まって、入った瞬間に声のトーンが自然と落ち着く空気感がある。
接待やデート、同僚との食事など用途は幅広いが、「カウンターで一人、店主と話しながら飲む時間が一番贅沢だ」という常連の声も聞かれる。席数を絞った構成のため、週末は予約が埋まりやすい。平日の早い時間帯であれば比較的席が取りやすく、初めての来店なら落ち着いて過ごせる曜日を狙うのも一つの手だろう。


