和とフレンチが交差する、祇園の気ままな一軒
京都市周辺で採れる旬の魚介や野菜を中心に仕入れ、メニューは季節ごとに入れ替わる。京湯豆腐や原木の生ハム、ボルケーノ風ポテトサラダといった品が同じテーブルに並ぶ光景は、和食とビストロを掛け合わせたいちのはじまりならではの風景だろう。地元の生産者から届く食材を使うことで鮮度を保ちつつ、地域の経済循環にも関わるという考え方が仕入れの軸になっている。炭火焼きや煮物、お造りなど調理法も多彩で、その日の気分に合わせて自由に選べる構成を採用している。
個人的には、和食の落ち着きとフレンチの遊び心が一皿ごとに入れ混じる感覚が印象的だった。お酒との相性を意識して一品ずつ丁寧に仕上げており、食後には自家製デザートまで用意されている。刺身醤油のほかに九州の甘い醤油も選べるため、お造りの盛り合わせひとつとっても味の幅が広い。こうした細かな選択肢があるぶん、再訪のたびに違う楽しみ方ができるという声が目立つ。
備長炭で引き出す京鴨の柔らかさ
味と衛生面の両方で厳格な基準を満たした国産の京鴨を、締めたての状態から備長炭でじっくり火入れしている。臭みがなく、噛むほどに旨みが広がる仕上がりは、鴨料理に馴染みの薄い人でも食べやすいと感じる利用者も多い。炭火焼きの野菜と自家製の柚子胡椒が添えられることで、一皿のなかに味の変化が生まれる。グリルのすっきりした口当たりは、日本酒にもワインにも合わせやすい。
京鴨のグリルを目当てに訪れる常連客が少なくないという話を聞いた。素材の持ち味を損なわないよう、火加減と炭の距離を細かく調整しながら焼き上げる工程は手間がかかるものの、そこを省かない姿勢が味に直結している。京都という土地柄、鴨を扱う飲食店は珍しくないが、ビストロスタイルのワンプレートで提供するアプローチは独自性がある。
宴会にも普段使いにも応える構成力
全8品で組まれた「はじまりコース」は、おばんざいの盛り合わせからスタートし、海鮮・肉・〆までを一通り網羅したボリュームある内容になっている。焼酎、日本酒、ワイン、スパークリングに加え、珍しい銘柄まで飲み放題に含まれるため、ドリンクの選択肢で困ることはほぼない。コース以外にもアラカルトで注文できるので、少人数の飲みから歓送迎会・同窓会まで人数やシーンを問わず使い勝手がいい。オンライン予約にも対応しており、事前に人数やお酒の有無を指定できる。
飲み放題の対象にスパークリングワインや珍しい銘柄が入っている店は祇園エリアでもそう多くはなく、コストパフォーマンスの面で驚いたという口コミが散見される。コース料理は京都産の食材を和食とフレンチの両方で味わえる流れになっており、一度の食事でジャンルをまたいだ体験ができる。迷いやすい人にとってはコースが入り口として選びやすい。
京町屋を改装した、力の抜ける空間
祇園四条駅から徒歩約3分の場所にあるいちのはじまりは、京町屋をベースに改装した店内が特徴的で、木のぬくもりが残る座敷席、一人でも気兼ねなく座れるカウンター席、友人同士に向いたテーブル席と、用途に応じた席が揃う。「離れ」と名付けられた半個室には冬場こたつが設置され、足元から温まりながら食事ができる。
入り口をくぐった瞬間に感じるのは、居酒屋というよりも誰かの家に招かれたような距離感の近さだという声がある。肩肘張らずに過ごせる空気は、会社の打ち上げや家族の集まりなど幅広い場面に合う。価格帯も普段使いしやすい設定で、料理とお酒のバリエーションを考えると繰り返し通いやすい一軒になっている。


